283. ミハイルの手料理

「エカテリーナ……ようこそ」

いつもの東屋にミハイルは先に来て待っていて、そんな言葉でエカテリーナを迎えた。

いつもの待ち合わせでは、身分が高い側のマナーに従って、ミハイルのほうが少し遅れてくる。けれど今回は、ミハイルのほうが招いた側という見立てだから、先に来て待つのが適切なのだろう。

ようこそは、場所が学園の設備である東屋だから少しそぐわない気がするが、招いた側の決まり文句なのだろう。

と思って、エカテリーナは招かれた側として決まり文句を口にした。

「お招きにあずかりありがとう存じます。お言葉に甘え、先日の通りに皆で参りました」

エカテリーナの隣で、フローラが頭を下げる。ミナとイヴァンは、以前と同様に少し離れたところで、ルカと一緒に控えている。イヴァンは今日も、ルカに対して威嚇気味だ。

「うん、フローラもようこそ。いつものお礼だから、二人に来て欲しかったんだ」

ミハイルは、珍しくそわそわした様子だ。

わかる。自分が作った料理を人に食べてもらうって、緊張するよね。

私もお兄様に初めて差し入れした時、美味いって言ってもらえるまで、けっこうドキドキしていたなあ。私の場合、フローラちゃんに一緒に作ってもらったし、お兄様シスコンだしで、そんなに緊張する必要なかったにもかかわらずそうだったもの。

そんな気持ちで、エカテリーナは微笑んだ。

「学園祭では、ミハイル様のお料理はたいそう好評でしたわ。今日は楽しみにしてまいりましたの」

ハードルを上げてしまったが、これは事実だ。食べることができたクラスメイトたちが、一生の思い出!と言いつつ褒めていた。

「期待に添えるといいんだけど……なにしろ慣れていないから、君たちみたいに上手には作れていないと思う」

そう言いながら、ミハイルは手元のバスケットを開いた。

東屋の小さなテーブルには、あらかじめ三人分のトレイが置かれて皿とカトラリーが準備されている。きれいにセッティングされているから、これはルカがセットしたものかもしれない。ミハイルならこれくらい、自分でもやってのけそうな気はするけれど。

紙で包んだクレープをバスケットから取り出すと、ミハイルは皿の上に置いて紙を開く。

焦げ目などない、きれいな焼き色のクレープが現れた。

「きれいですわ。お上手な焼き加減でしてよ」

「ありがとう」

ミハイルは、はにかむように微笑んだ。少し不安そうで、少し照れたような表情だ。

「どうぞ、ええと……召し上がれ」

你的回應